森田正治『ふだん着の作家たち』(小学館)

昭和五十九年六月一〇日初版第1刷 発行
ISBN:409387008x

目次


第一章 広津和郎先生の晩年 5
 誰もが石のように黙りこんで
 目の隈で健康状態がわかる
 雑踏の町のなかが大好き
 「泉へのみち」原稿紛失事件
 「松川」を語りあう二人の老作家
 癇癪の休火山が噴火する
 相手がひっ込めば、いつでも止める
 パイを握りながらも裁判批判
 六十半ばのアパートひとり暮らし
 いつも重い荷物を背負って……
 いつでも六法全書と虫眼鏡……
 痛風とたたかいながら……
 はま夫人のご遺体に慟哭
 秘蔵の古美術を次々の手放す
 「やっと、“松川名士”から解放されたよ」
 志賀さんのところはいいなあ
 “虚無”から“楽天”への険阻な道
 悲しい相模湾上の太陽


第二章 “小説の神さま”の素顔 47
 志賀先生との偶然の出会い
 たまには癇癪玉を破裂させる
 康子は僕より先に死んではいけない
 軽井沢「落馬」事件のてんまつ
 鉛筆がき、読みやすい原稿
 いたずら電話と志賀先生
 突然、私の安アパートへ……
 「耄碌したら書かないほうがいいよ」


第三章 若き日の「狐狸庵」先生 71
 神妙な顔をしたカトリック作家
 よれよれのレインコートで浮浪者に
 文壇下士官と新人の「ある事件」
 おかしな女性ファンに追いかけられる
 奥さんを「付き添い婦」と強弁
 ゴルフは男子のなすべきものに非ず?


第四章 一期一会のひとびと 91
 荷風先生の陋屋を急襲
 生きすぎた?プロレタリア作家
 メタフィジック批評、服部達氏の場合
 佐藤春夫さんの大きな耳
 雪の舞う夜のバス停で


第五章 忘れ得ぬ点鬼簿 105
 青野さんの大きな怒声
 真正面から死を見据えた高見さん
 「人間、死ねば空ですよ」
 舟橋さんの国語問題への執心
 ときには一転して矛盾のかたまりに
 ビールの思い出−−武田泰淳さん


第六章 文壇雑記帖あれこれ 131
 新聞小説を変えた「人間の壁」
 用心深く慎重な人−−石川さん
 石川達三さんの「長い道」
 「私の年齢じゃあ、もう男はできない」
 佐多さんと「体の中を風が吹く」
 やさしく、気さくで、芯が強い
 

第七章 「かえる会」の老いたる登山家 151
 明神池の蛙の大群
 満点の星を眺めるだけでいい
 雪渓に巨躯を投げだした長越さん
 ヘリコプターで頂上へ
 「かえる会」のカラオケ名人たち
 「安楽椅子の登山家」もよし


第八章 「新聞小説」の舞台裏 169
 「誰に書いてもらうか」がまず大変
 当時、原稿料の値上げはなかった
 さしえが作品をよくする場合
 作家とピッチャーは似ている
 作者、さしえ、担当者の「三人四脚」
 一千万円懸賞小説「氷点」
 「なぜ魚津を死なせたのか」


第九章 このごろ思うこと 189
 編集者は裏方に徹するべきか
 文学賞が多すぎる
 活字離れと自然破壊の関係
 作家の側の問題、出版社の側の問題
 ほんとうに「戦後は終わった」のだろうか


あとがき 204